俣野善彦
今年が3回目となった紅葉狩りは、好天に恵まれた11月3日(金)、東京都民にとり身近かな秋の奥多摩を訪ねることになった。
JR新宿駅を午前8時47分に出るホリデー快遠「おくたま・あきがわ号」5号に乗車すると、途中、中野・三鷹・国分寺・立川・西立川に停車するだけで、拝島には午前9時25分に到着した。ここで、列車は青梅線の最終駅「奥多摩」には進行方向の先頭から6両と、五日市線の「五日市」に向かう後部の4両車両に分けられた。
われわれの目的地である「御嶽(みたけ)」駅には、午前10時7分に到着した。新宿からの所要時聞は1時間20分であった。列車には多くの乗り越し客がいて、駅の改札を出るのにも随分時聞がかかったが、集合時間は午前11時であったので、それ
まで駅前を散策して全員の到着を待った。
奥多摩は「東京のふるさと」として都民に親しまれ、青梅・五日市線の沿線にはハイキングの好適地が多く、列車もハイキング客で混雑していた。
駅前には小さな露店が店開きして、近隣でとれた山菜、木の実、野菜、漬物やまんじゅう、お団子が売られ、大多摩(奥多摩と山梨を含む)の東京シティ・ガイド(観光財団)の名札をつけて、プロと自称するボランティアが駅周辺の登山・レジャー・観光施設の案内をしてくれていた。
今年は暖冬のために紅葉が遅れ・駅前から遙か遠くに見える御岳山の武蔵御嶽神社宝物殿付近が僅かに色づいている程度であった。
当日の参加者は19名、午前11時遇ぎには全員の到着が確認され、みたけ駅前の青梅街道を横切り、御岳橋を渡って突き当たる吉野街道を左に曲がって約10分で玉堂美術館に到着、正午まで日本画壇の巨匠・川合玉堂の作品を鑑賞した。
美術館には玉堂16歳の折りに描かれた花鳥の実に細かな筆遣いが判る写生が展示されており、若い時からの画才が示されていた。展示作品は84歳の絶筆まで網羅されており、画室もそのままに再現されていて、往時を偲ぷことができた。
正午に美術館前の入口の階段を利用した記念撮影を済ませ、午後2時の「ままごと屋」の会食時聞まで、目的地別に小澤酒造（株）の酒蔵見物、スケッチ、御岳美術館と3班のグループに別れて散った。
御岳美術館を目指す組は駅から来た道を戻り、駅前で青梅街遣を左に曲がり、しばしなだらかな道を登ってから、御岳美術館の標識に従って左に別れた小道を下って多摩川べりに出たところに架けられた神道橋を渡らずに、川の上流に向けて川沿いの御岳渓谷遊歩遺[みたけ歩楽里道(ぷらりどう)]をしぱし歩き、美術館に到着した。みたけ駅前から20分の行程であった。
美術館は「たましん歴史・美術館分館」として経営され・毎隼4月11日を桜の日、8月21日を倉田三郎生誕記念日、11月3日を開館記念日として『スケッチの日』に定め、美術館入場者に画材を無料で貸出し・スケッチを勧めている。我々が訪れた日も、2階のテラスを提供してこのサービスを受けた数組の親子連れがスケッチを楽しんでいた。更に当日の来館者には記念品（3Bの館名入りの鉛筆）がプレゼントされた。
美術館は一階のエントランス・ホール、二階の第1、第2展示室に約40点の展示品が置かれ、著名な日本人芸術家の陶芸、彫刻、絵画の他、倉田三郎記念室にはスペインを描いたスケッチ20点の作品が展示されていた。これからスケッチを学ぶ人には参考になる作品の数々であった。二階には上野の国立西洋美術館の野外に置かれたA.ロダンの「カレーの市民」の小さな第一試作品も展示されていた。た
またま10月21日に上野で等身大の6人の大きな彫刻を見てきたばかりで大変に強い印象を受けた。
御岳美術館の川向こうの岸には駐車場が設置されており、渓谷を愛するマニアが多いことも判った。
美術館からは川沿いに遊歩道を下流に歩くことになった。御岳橋の下を通り、途中、あゆ釣りの釣り人も多く、又グループでカヌーの水中で引っ繰り返った状態から身体を起こす訓練に励む人達、スケッチや筆で腕を動かす日曜画家の姿も沢山見受けられた。
歩遣の上からちょっと下の方で水彩で描く人の絵を覗きこんだ時、まだ遠くの緑色の木々の色が変わっていないのに、その色彩を少し黄色で描いているのも見かけた。紅葉には未だ早く、下りの狭い遊歩道も余り人の行き来きが多くなく、御岳美術館から約50分で楓橋の袂の「ままごと屋」まで歩く事ができた。
お食事は地元の清酒・澤乃井直営「ままごと屋」の渓流が良く見える新館・楓橋の大広聞にて、蔵元だけで飲めるお酒で豆腐・ゆば料理を楽しみ、参加者全員が満足して現地解散した。
晴天に恵まれ、都心の新宿駅から約１時間半の場所に、この様に軽装の散歩気分で渓谷美を楽しめる場所があったのが驚きであった。
