三好 彰
美術の会で、9月3日、東京都庭園美術館で開催中のマリー・ローランサン回顧展を鑑賞した。参加メンバーは酒井ご夫妻(美術の会の幹事)、山崎ご夫妻、俣野夫人、佐藤夫人(花子様)、篠崎さんと三好(二人)であった。
会場の東京都庭園美術館の詳しい説明は
同館のホームページを見ていただくのがよい。フランス人建築家の設計になるもので、大正末期から昭和初めにかけて一世を風靡したアール・デコ様式によっている。建物そのものが芸術品であるゆえに、この中に展示される美術品は自ずと高い完成度が要求される。
最初に、館内で開かれたサクソホンのデュオとピアノを交えたトリオによる室内楽を鑑賞した。このような構成での音楽に明るくないが、選曲の良さとともに若い演奏家の熱気とで満席の会場は吸い込まれるように音の世界に溶け込んだ。
さてマリー・ローランサンはちょうど120年前に生れたが、母は未婚であった。同じような境遇のドイツ人と結婚すると、独仏を舞台とする第一次大戦が始まって逃亡生活を余儀なくされるが、追って離婚するなど数奇な人生を歩んだ。それゆえにか、彼女の作品は現実の厳しさとうらはらに幻想的で叙情的な世界を作り出している。描かれている夢の世界の中に住むような女性には、どこか翳りも感じられて、そこに彼女のメッセージが隠されているようでもあった。
彼女の生きた時代は絵画が変革を繰り返したわけだが、その中で独自の画風を作り上げてそれを貫き通した芯の強さが彼女の苦難な人生を支えたのだろう。自画像が何点かあって、その時点の写真も展示されていたが、絵の方がずっと細めに見えたのは気のせいであろうか。
内外から集められた70点余の油絵のほか,、水彩画、デッサン、スケッチなどもあって、マリー・ローランサンの半世紀に及ぶ活動を知るのにこの上ない良い機会であった。この機会にボストン美術館の所蔵品を調べたら、彼女の作品は2点しかなく、常設でないようだ。今回出席されなかった方はボストン美術館ではなく、この美術館でお楽しみください。
絵の鑑賞を終えて美術館につらなる庭園を散策した。日本庭園から洋式の庭に出るとバラが咲いていた。今年は冷夏であったが、この日の最高気温は例年より高く残暑がひときわ厳しかった。
さて近くのレストランでイタリア料理を楽しんでいると急に雷鳴が響き、篠突く雨となった。困った、帰れないと案じていたら、小一時間でピタリと止んだ。外に出ると気温が下がって夜風が心地よかった。ところが落雷で電車が止まって一部の方は帰路に難儀されたようだ。しかし、そういう場合こそマリー・ローランサンのメルヘンの世界に思いをはせると心和むことだろう。
なお美術館で偶然、幸野夫人にお目にかかった。お元気になられたご様子に一同ほっとした。
佐藤花子、山崎恒
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