名古屋ボストン美術館の旅 (2001年)
会員 三好 彰
7月14日(土)午後、
名古屋ボストン美術館に18人が集合した。最初に浅野徹館長から「
MFA(ボストン美術館)の収蔵品を20年間にわたり順次展示することを目的に1999年に開館した。5年毎に展示テーマを見直す常設展と、年2回の企画展がある」とのお話しがあった。
ついでハーバード大学で学ばれた井上学芸員から、現在の企画展である「紅茶と西洋陶器」について、「茶と磁器は中国の原産で17世紀に伝わった。磁器はデルフト(オランダ)など欧州各地で作られるようになり、現在も珍重されている」と、スライドを交えての解説を戴いた。
そしてかつてMFAに勤務され、現在当会会員である柴柳美佐さんから「MFAには肥前陶磁で未整理のものがあり、調査したところ逸品が多いことが分かった」と研究報告された。
講演の後、浅野館長と井上学芸員のご案内で企画展を鑑賞した。ボストン滞在中にMFAの会員になり30回以上見学したが、展示品の素晴らしさが理解できていないことを知って恥じいった。
夕食は大正2年創業の料亭「蔦茂」で懐石料理に舌鼓を打った。そして芸処・名古屋の新内勝知与(しんない・かつちよ)師匠の熱演があった。
日本文化を高く評価したモースが日本の音楽だけは理解に苦しむと書き残していることと照らし合わせて聴いたが、歌詞に秘められた色事はとても理解できなかったことだろう。会食後、久米さんのお知り合いのクラブでクラシック音楽の歌唱に興じるという盛りたくさんな一日であった。
翌日は、内藤さんのご案内で市内を見学した。
名古屋は築城の際に町屋を武家屋敷と城の間に配置した。戦災後の復旧で100メートル道路を作り、地下を多様に活用していること、そして市内の墓地を一箇所に集めて東山平和公園にした事など、世界が今も注目する都市設計がなされていることを知った。
ボストンで都市計画といえば、10年計画で進められている
Big Dig がある。都心を走る高架の Free-way を地下に埋めるアメリカで最大の工事である。交通渋滞の緩和のみならず、跡地を公園にするなどボストンを一層素晴らしい町にしようとしているので完成(2004年の予定)後に訪問したいものだ。
さて自動織機、自動車、陶器、楽器などで名古屋から起業家が輩出しているが、関係者が住んだ町並みを見た。そしてボストン地区がシリコンバレーと並んだ起業家のメッカであり、ハイテク産業を生みつづけていることに思いが及んだ。
ついで
トヨタ産業技術記念館を訪問した。間瀬祐士館長のご案内を戴き、ここでもローウエルの繊維歴史博物館と木綿工場博物館、それに大正時代に駐日アメリカ大使であった Larz Anderson 氏が収集したクラシック・カーを展示した交通博物館(ブルックライン)を懐かしく思い出した。
見学の最後は、下水処理過程で発生する熱を利用した熱帯植物
ランの館であった。
ボストンに熱帯植物園はないが、春先に毎年開かれているニューイングランド・フラワー・ショーの賑わいを懐かしく思う方も少なくないことだろう。
今回の見学会では、神代にさかのぼる家系という牛毛神社の久米生光禰宜、清水建設の内藤克巳部長に大変お世話になった。文字通りの末筆であるが、両氏に深甚な感謝を申し上げる次第である。
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